継承への布石

日本の絶滅音楽を考える

藝術としての普化宗尺八楽

2025-09-10 08:40:20
2025-09-10 18:25:05
目次

 人間が、普遍的に有する信仰心の具現化としての藝術は、六根(眼・耳・鼻・舌・身・意)において顕在化され、六境(色・声・香・味・触・法)と結びつき、六識(眼識・耳識・鼻識・舌識・身識・意識)によって認識される。

 併し、これらに固有の実態はなく「無」とされていることから、同時に一切の「有」としても扱うべきものである。

  佛教語大辞典を著した中村元は、藝術を以下のように、二項対比的に記している。

 【藝術】 ① 仏教僧の示した奇蹟のこと。<『晋書九十五巻』>

     ② 世俗のもろもろの技術のことか。<『出三蔵記集』十三巻『大正新修大蔵経』五十五巻九十七中>

【技術】   ① 技芸のこと。[S] kala<Lank(唐)>

     ② 奇蹟を示すこと。<『出三蔵記集』四〇八ノ十七>

     ③ 呪術のこと。<『長阿含経』十三巻『大正新修大蔵経』一巻八十四中>

これは、本来一つであるものの各方面を、視覚化あるいは文字化するときに有効な手段である。

実際の藝術作品や経文などにも、このような表現を見ることが出来る。

 

<金剛界曼陀羅図・胎蔵界曼陀羅図>

<色即是空・空即是色> <上求菩提・下化衆生> <明暗>

 

普化宗尺八では、「一音成佛(いっとんじょうぶつ)」という表現を使う。

非物質である「意識」と物質である「実在」は、一切である一音で顕現する。

一音は、一切であるから、其の竹(尺八)から出る凡ての音は、無音を背景に自在に響かせることが出来る。

このように無限にある音から、伝統的感性により決定された、「節(旋律)」・「音色」が、唯一無二の音聲として響くように、それらの個性に合わせて製管された「地無し尺八」と吹奏技法によって、楽曲として纏められ、吹かれるのが、普化宗尺八楽である。

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絶滅危惧種コンサート制作委員会

絶滅危惧種音楽を未来へ「繋ぎプロジェクト」全7回 〜文政5年の八橋流と、明暗調律(九半割)の普化宗尺八・当道が伝承した平家と共に〜 <演奏者> てん・仁智(じんち):八橋流箏曲 田中奈央一(たなか なおいち):平家 彈眞空(だん しんくう):普化宗尺八 絶滅危惧種コンサート制作委員会事務局連絡先 redlist_concert@atelier-canon.jp